晶子の徒然草
代表が最新情報をお伝えすると共に、毎日に全力を尽くす意味合いや
季節の移ろいなどの想いを月1回配信しています。
冬が始まる晩春にとうとう皇帝ダリアが大きなピンクの花をつけ始め、私は大興奮しています。来る人来る人にダリアを見せてビックリしてもらい、スマホで撮った写真を見せては悦に入っています。台風で倒れた10月初旬には2メートルくらいだったのに、支柱を何本も従えて蘇った今では、二階の窓に届くほどの3メートル以上の高さとなり、大輪の花が次から次へと咲いて空にそびえ立つ姿は圧巻で、感動しました。ただ、自分では軽い気持ちで植えた一年草がこんなに大きくなるとは思わず、倒れた時に大騒動となったことを思い出し、なんでもしっかり現状分析し将来を予測した上で行動しないと、とんでもないことになると実感させてくれた花騒動でした。
この皇帝ダリアが枯れ果てる頃には、いよいよ本格的に冬がはじまります。木枯らしが吹き、木々の葉が落ち、はやいところでは初雪の知らせが聞こえてくるかもしれません。真冬の寒さに備えて、いよいよ私の大好きな「こたつ開き」の時期となってきました。皆様のお宅では、「こたつ開き」されましたでしょうか。
寒さが厳しくなるにつれ、食卓に鍋が並ぶことが多くなってきました。よせ鍋、ちゃんこ鍋、湯豆腐など、ひと口に鍋と言っても意外にバリエーションが豊富で、お手軽で野菜がたっぷりとれる鍋は、我が家の冬の定番です。日本各地には、海や山の幸を生かした自慢の鍋物がたくさんあります。料理としておいしいだけでなく、皆で鍋を一緒につつくところが鍋料理の醍醐味。鍋料理を誘って受け入れてもらえたら、嫌われていない証拠なので、ご安心ください。普段は料理をしない人も「鍋奉行」に変身し、あれこれ指図して大張り切りという姿もよく見られます。
皆で美味しい鍋を囲んでおなかも心も大満足という楽しみは、いつ頃から始まったのでしょうか。実は、鍋物の歴史はあまり古くはなく、庶民が鍋を囲んで今のような形で鍋物を楽しみ始めたのは、江戸時代になってからであり、おでんやよせ鍋、ちり鍋などが広く普及し始めるのは、江戸末期にさしかかる頃です。
日本の正式な料理は一品ずつ器に盛られるもので、身分や地位などによって食事の場所、時間も分けられていましたから、ひとつ鍋を皆で囲んで箸でつつくなどということはなかったのです。しかし、農村では「囲炉裏」で煮炊きをし、「囲炉裏」を囲んで食事をしていました。囲炉裏の歴史は古く、竪穴式住居の跡にも見られるほどです。鍋物のルーツは、道具としての「鍋」ではなく、この「皆で囲む」という囲炉裏での食事形態だともいえそうです。江戸の料理本「料理物語」(1643年)には、炊事場で魚や野菜をみそで煮て、鍋ごと食卓に出す「なべやき」という料理が記されています。できたてを熱いうちに食べるおいしさは人々を捉え、そのころから、制度や習慣を超えて冬の大ブームとなったようです。
地方色豊かな食材を使ったお国自慢の鍋、キムチ鍋や豆乳鍋、トマト鍋のような新しい鍋。鍋物の種類は数え切れないほどありますが、基本は次の3タイプになります。
①出し汁や水で煮て取り分け、薬味やタレで好みの味にするちり鍋や水炊きなど。
②味付けした出し汁で煮るもの。うす味にして汁も味わうおでんや寄せ鍋など。
③濃い味の割り下や味噌だれで煮るもので、すき焼きや味噌煮込みなど。
鍋物は家庭で作ると、いろいろなものを入れ過ぎたり、煮方を間違えたりして「ごった煮」風になってしまい、美味しさが損なわれることがあります。この3つの鍋のタイプを踏まえて、作り方のポイントを押さえると、家庭でも失敗なくおいしく作ることができると、時々訪れる小料理屋の亭主がこっそり教えてくれました。教えてもらったポイントをご紹介します。
●鍋のタイプに適した鍋を選ぶこと。たっぷりの汁を使う①や②の鍋物には
保温力があり化学変化の少ない土鍋。③の濃厚な煮汁の鍋やすきやきには底が平らな鉄鍋。
●食材は相性を考え、シンプルを心がける。何でもかんでも入れると「闇鍋」に。
●昆布や鰹節は日本の軟水と相性がよい。硬水のミネラルウォーターは鍋に向かない。
●あくはこまめに取り、煮詰まらぬよう最後までおいしく食べるにはうす味の出しにし、
味付けをしていない出し汁を追加しながら調整する。
おすすめは、毎日でも飽きない、冬の食材をシンプルに味わう鍋です。私が最近よく作るのは、鱧やアンコウやカワハギ鍋。冬の野菜と、魚、肉など一品の組み合わせが、単調にならない鍋料理の秘策といえるのではないでしょうか。素材からの滋養を体に取り込み、「食べる温かい幸せ」を堪能しましょう。
いよいよ来月は師走。寒さが日増しにつのり、日だまりやこたつの暖かさに小さな幸せを感じる季節です。お風邪など召されぬよう、冬にも凛と咲く花々や、錦秋を彩る紅葉に癒されながら、お鍋を食べて心まで温まる日々をお過ごしください。