早いもので、花の便りがもうすぐそこまで来ている楽しい３月下旬となりました。皆様の一年の総決算である怒涛の確定申告が終了したと思ったら、もう４月の足音が聞こえて来て、冬の厳しさもあっという間に通り過ぎたように感じられる今日この頃です。今年の冬、私を高揚させてくれたのは冬季平昌オリンピックでした。トップアスリートの方々が、日々己を鍛え続け、この日を目指し万全を尽くして競技に臨む姿、極限状態で自己ベストを尽くす様子に、私は言葉もなく立ち尽くすしかありませんでした。まさに、勇気をわけてもらいました。

　特に素晴らしかったのは男子フィギュア、女子スピードスケートですね。今回の羽生、宇野両選手の素晴らしい演技は皆様も記憶に新しいと思います。ダイナミックなジャンプに美しい演技に人種・国籍の差はないと改めて感じました。羽生選手はオリンピック前にケガをしていたにもかかわらず、大舞台で最高の演技をみせてくれました。ご本人の苦労は計り知れないものがあったと思いますが、つらい状況だからこそ必ず成功する、という強い気持ちでオリンピックに臨んだそうです。不運な状況であってもポジティブに捉え、成長へのチャンスへと変えられる力というものは、オリンピック選手だけではなく、私たちにとっても長い人生を乗り越えるために必要な能力であると思います。そんなアスリートの方々の尊い姿を、確定申告期間という税理士業界にとっての正念場の時期に目の当たりにでき、力をもらえたことがとても幸せです。

　また、女子500メートル金メダルの小平奈緒選手。10年以上も金メダルに挑戦し実現するなど、本当に素晴らしい大和魂です。また、スピードスケート女子パシュート（団体追い抜き）の世界記録を持つ日本チーム（高木美帆、佐藤綾乃、高木菜那）も、五輪新記録で前回五輪覇者のオランダを下し、同種目初の金メダルを獲得しました。圧倒的な「個」の力を誇るオランダに、日本は「チーム一丸の技術」で対抗し勝利できたのです。勝因は４位でメダルを逃した前回のソチ五輪後、所属の垣根を越えてトップ選手が集うナショナルチームを発足させ、１年で約３００日の練習をともにし、一糸乱れぬ脚の運びや、減速を抑える先頭交代の技術を磨いたからです。今季３度の世界記録に貢献したエース高木美帆選手は「自分たちがパシュートにかけてきた時間はどの国よりも長い」とチーム力への自信を強調していました。まさに、団体技術こそ、日本のお家芸、皆で力を合わせ努力に努力を重ね限界に挑む。これこそが皆様が私たちに求められているものであることを、彼女たちの金メダルを通じて深く感じました。

　さて、素晴らしかった冬期オリンピックが幕を閉じたら、いよいよ春の到来ですね。３月３日は桃の節句ですが、これはもともと「上巳（じょうみ・じょうし）の日」と言われ、古代中国の陰暦に従ったものです。現在の暦に合わせると３月末から４月中旬にあたり、この時期は梅の花が咲き終わり桃の花が咲く頃で、春の季語でもある桃の花にちなんで「桃の節句」と呼ばれるようになったそうです。雛人形を飾り、女の子の健康と幸せを願う日にぴったりのネーミングですね。

　今が見ごろの桃の花ですが、実のなる桃(実桃)の旬は夏です。ひな祭りの飾りには実桃の花ではなく観賞用に改良されたハナモモが使われています。ハナモモの花は実桃の花に比べて少し大きく、八重桜ほどの大きさで色は桃色、白、赤などが揃っていて、枝を埋め尽くすようにふわふわの花が咲く様子は優しい雰囲気と共にとても華やかで、私は大好きです。梅や桜の清楚な咲き方も日本人は大好きですが、桃の花の柔らかく華やかな咲き方も女性らしくて素敵ですね。しかも桃の花は美しいだけでなく厄払いや魔除け、長寿をもたらす力があるといわれています。

　そして桃には花以外にもたくさんの効果が詰まっています。果実には食物繊維を多く含むために老廃物排出効果があり、葉にはあせもやただれ、日焼けに効く成分が多量に含まれており、肌の弱い人や子供に適した入浴剤や収れん化粧水としても知られています。さらに桃の種を使った漢方薬「桃仁」は女性の疾患に効き目があり、そしてあの芳醇な香りには鎮静効果も含まれていて、桃は女性にとって嬉しい効能がたっぷり詰まった植物だと言えます。可愛いいピンク色の花や葉、実の中にたくさんの不思議なパワーを持つ桃の力を借りて、健やかに美しく過ごしていきたいものです。

　木々が芽吹き、春の訪れを感じられるようになりましたが、朝夕はまだ冷え込むこともございます。お風邪など召されませんようご自愛いただき、春陽のもとで穏やかな日々を過ごして、桜の花の訪れをお待ちください。

　（尚、今月の「温泉徒然草」は皆様とオリンピックの感動を分かち合いたく、お休みさせていただきました。また次回にご期待下さいませ）